転職の「条件」ではなく「本音の理由」から会話を始める理由
―― 転職エージェントの面談というと、「経歴」や「希望の年収・職種」といった条件面から聞かれるイメージがあります。
竹内:
もちろん現状の確認、経歴のざっくりとした流れもお聞きしますが、私が一番はじめにじっくりとお時間をいただくのは、「今回の転職理由の確認」なんです。
私が担当している事務・管理領域や、マーケティング、クリエイティブ領域の女性は、「大きな不満はないけれど、将来がなんとなく不安」「もっとスキルアップしたい」「ワークライフバランスを整えたい」など、さまざまな理由を持たれています。なので、最初にその「一番解決したいお悩み」をしっかりすり合わせしておかないと、その後の求人応募の段階で、どうしても目的がブレてしまうんですよね。
―― 目的がブレてしまう、というと?
竹内:
たとえば、「本当は残業を減らして自分の時間を確保したい」というのが一番の目的だったはずなのに、求人票の華やかな仕事内容や、少し高い年収といった「条件」に引っ張られて応募してしまう、といったケースです。
それでは仮に内定を得て転職できたとしても、入社後にまた同じ悩みに直面して後悔することになりかねません。だからこそ、最初の段階で「今回一番解決したいことは何か」を明確にすることを、何よりも重視しています。
―― 求職者側としては「本当の理由」を最初からエージェントに話すのは、少し勇気がいりそうです。
竹内:
本当にそうですよね。最初はみなさん、面接の回答のような「形式的な理由」をおっしゃることがほとんどですね。「年収を上げたいからです」とか「キャリアアップしたくて」とか。
それが悪いわけでは決してないのですが、私はそこから一歩踏み込んで、「なぜそう思われたのですか?」と問いかけるようにしています。
―― 「なぜ」を突き詰められるのは、 圧迫感を感じてしまうのでは……?
竹内:
もちろん詰問するような雰囲気には絶対にしません。リラックスして、お友達に相談するような感覚で話していただける雰囲気作りは常に心がけています。
じっくりお話を聞きながら待っていると、求職者様がふと心を開いてくださるタイミングがあるんです。そのときに、「正直、そこだけじゃないですよね?」と少し踏み込んでみると、「実は……上司との人間関係が辛くて」や、「どれだけ頑張っても正当に評価されないのが悲しくて」といった、本音の理由をぽろっとこぼしてくださいます。
「年収を上げたい」という言葉の裏側に、「自分の努力を認めてほしい」というお気持ちや、職場への不満が隠れていることは本当によくあります。そうやって引き出した「本音」の中にこそ、その方が次に進むべき「本当の理想」のヒントが隠されているんです。
だから、最初の面談では遠慮なく、格好つけずに本音を教えていただきたいなと思っています。
声のトーンで気づく迷い。顔が見えないからこそ磨かれた「察する技術」
―― 最初の面談で求職者の方が本音を話しやすくなるように、意識していることはありますか?
竹内:
求職者様が話してくださった、これまでに経験してこられた実績や、日々がんばってきた努力がどれだけ価値があることなのかを、言葉にしてきちんとお伝えするようにしています。
自分のしてきたことを認められ、敬意を感じると、人は安心できると思うんです。「この人には本音を話しても大丈夫だな」と感じていただけるようなコミュニケーションを心がけています。
―― 最近はオンラインや電話での面談も多いと思いますが、顔が見えないなかで本音を見極めるのは難しくないですか?
竹内:
キャリアアドバイザーになりたての頃は本当に難しかったです(笑)。ですが、この仕事を3年ほど続けさせていただくなかで、「声のトーン」や「話す間(ま)」から、今どんなお気持ちなのかが少しずつ分かるようになってきました。
たとえば、条件面のお話をしているときに少し声のトーンが下がったり、言葉に詰まる瞬間があったりすると、「あ、本当は別のところで悩まれているのかな」「今の提案はあまりピンときていないのかも」と察知することができます。
お電話では、顔が見えないからこそ、耳から入る情報に全神経を集中させて、その方の心の迷いをすくい取るようにしています。
―― 自分の考えを上手く整理できないまま、面談当日を迎えてしまう方も多そうです。事前に何か準備は必要でしょうか?
竹内:
事前の準備は、本当に何もいりません!「職務経歴書が白紙だから」「自分の思いがまとまっていないから」と面談を躊躇される方もいらっしゃいますが、ほとんどマイページを入力されない状態でお越しいただいても100%問題ないです。
今の思いや、やってきたことを、そのまま正直に伝えていただければ、私たちがそれを一緒に形にしていきます。
もちろん、事前にご経歴などを記載いただいていれば、その情報をもとにお話しできるので、「余裕があればぜひ」という感じですね。
―― 約1時間の面談時間では、どのくらい話が進むものですか? 相談の途中で終わってしまうこともあるのでしょうか?
竹内:
具体的な求人のご紹介までできることもあれば、転職理由や希望条件のヒアリングだけして、求人のご紹介はマイページで……というパターンもあります。
求職者様にとっての1時間はとても貴重なものですから、私も時間内でできる限りお話を聞き切りたいと思っています。ですが、もしどうしても時間が足りなかったり、面談後に「やっぱりこれも伝えたかった」ということが出てきたりした場合は、後日10分ほどの短い追加面談を設定してお話を伺ったりすることもあります。
納得いくまで、とことん並走しますので、そこは安心して頼っていただければと思います。
システムだけに頼らない「人力」の求人探しで本当に合う企業を見つける
―― これまで担当されたなかで、特に印象に残っている転職サポートのエピソードはありますか?
竹内:
ご友人からの紹介で面談に来てくださった方がいたのですが、前職の環境で精神的にかなり追い込まれてしまっていて、面談の最中に泣き出されてしまったんです。「私、本当に転職できるんでしょうか……」と、自信を完全に失っているご様子で苦しんでいらっしゃるのが伝わってきました。
ですが、過去のご経験を丁寧にヒアリングしていくと、素晴らしい実績もスキルもお持ちで、私は「この方なら絶対に大丈夫、輝ける場所がある」と確信したんです。
だからこそ、まずは「大丈夫ですよ」と徹底的にお伝えし、心の安定を取り戻してもらうことから始めました。
―― そこからどのようにして転職活動を?
竹内:
その方の性格やこれまでの背景を考えたときに、スキル面だけでなく、「人柄を重視してくれる、温かい社風の会社」が絶対に合うと思いました。そこで、ある企業をご紹介したところ、選考を通じてその方も自信を取り戻され、無事に内定をいただくことができました。あのときの求職者の方のホッとした笑顔は、今でも忘れられません。
―― 求職者の方に「本当に合う会社」は、どのようにして見つけているのでしょうか?
竹内:
まずは社内の求人システムで希望条件をもとに検索します。ですが、それだけでは「社風」や「職場の雰囲気」といった定性的な部分でマッチする企業はヒットしません。
そこで私は、社内の企業担当の部門に「今こういうことで悩んでいる求職者様がいるんだけど、カルチャーが合う会社はないか」と直接相談に行くようにしています。
―― システムでのマッチングだけでなく、人の繋がりで情報を集めるのですね。
竹内:
はい。企業担当者が実際に企業へ足を運んで肌で感じてきた「求人情報に項目がない企業情報」は、マッチングにおいて何よりも価値があります。「会話が少なくても黙々と作業できる環境がいい」「土日だけ副業がしたい」といった、システムでは少し探しにくい細かなこだわりも、企業担当と密に連携することで「ここなら合っているはず」という確実な求人を集めることができます。
システム任せの一括提案ではなく、社内の総力を挙げて「あなただけの1社」を探し出していると自負しています。
女性のライフイベントを見据えた、世代別のキャリアアドバイス
―― 女性の場合、結婚や出産といったライフイベントを考えて転職を悩む方も多いです。どのようなアドバイスをされていますか?
そうですね。特に20代の方であれば、将来のライフイベントを視野に入れて「今のうちに土台を作っておきたい」というご相談をよくいただきます。その場合は、ポテンシャル採用の機会がまだ豊富にあるうちに、早めに転職活動を済ませておくことをお勧めしています。先に安定した環境や望むキャリアを手に入れておくことで、いざライフイベントを迎えたとき、より柔軟に選択肢を持てるようになるからです。
―― 30代以降の方だと、またアドバイスの内容は変わるのでしょうか?
30代以降の方は、これまでのご経験をどう活かすかという「即戦力」としての視点がより強くなります。そのため、求められるスキルや市場の状況を、事実ベースでありのままにお伝えするようにしています。
これは決して厳しい現実を突きつけたいわけではなく、「期待値の調整」を行うためです。あらかじめリアルな状況を理解していただくことで、不必要な選考落ちでメンタルを削られたり、自信を失ったりすることを防ぐことができます。守りのサポートと言えるかもしれませんね。
ただ、年齢はあくまでも一つの要素でしかありません。「20代だから」「30代だから」と杓子定規に分類するのではなく、お一人お一人の状況に合わせてアドバイスさせていただいています。
―― 綺麗事だけではなく、現実的な戦略を一緒に立ててくれるのは心強いです。
竹内:
転職活動は、これからの人生を左右する本当に大きな決断ですし、たくさんの悩みが伴うものです。だからこそ、「まだ考えがまとまっていないから」「ネガティブな理由しかないから」といって、相談することを躊躇しないでいただきたいなと思います。
私たちキャリアアドバイザーの役目は、求職者様を面接して合否をつけることではありません。皆さんの「味方」として並走することです。ですから、面談の場では決してあなたの気持ちや現在の状況を否定するようなことはありません。
―― 「上手く話さなきゃ」と緊張する必要は、まったくないのですね。
竹内:
はい、本当に格好つけなくて大丈夫です(笑)。上手く話せなくても、不安な気持ちやモヤモヤしていることも、すべてそのまま伝えていただくことが、一番良い選択肢を見つける近道になります。
私はいつも、求職者様と同じ目線に立って、その不安を一緒に乗り越えていきたいと思っています。どんな小さなことでも、いつでも頼って、私たちに預けてくださいね。

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前職では、キャリアスクール事業に従事し講座の販売から、指導、カウンセリング、転職支援までトータルでサポートを行っておりました。その中で、自社採用でのリクルーターをした際に「その人の本音を理解し、納得感のある選択をともにしていく」という関わり方を経験いたしました。 その後、より多くの方が納得感を持ち職場を決断できるご支援をしたいと思うようになりtype女性の転職エージェントへ転職。現在は事務管理領域の転職希望者への転職支援を行っております。